小説好きな人でもまだオーディーオブックを試していない人も多いと思います。
自分も活字好きなので、最初は敬遠してたところがあります。
でも、今では毎日の欠かせない習慣になり、ここ数年で聴いた数は200冊以上(半分以上が小説)。
その中には『ナレーションに感動した』『これは活字以上』と思えた作品も。
そこで、この記事では『特に朗読が素晴らしく、初めてAudibleを聴く人にお薦めの小説』をまとめました。
【特にナレーションが良かった】オススメのAudible小説11選
全て『Audible定額聴き放題』の対象作品で、ナレーションに注目しつつ紹介していきます。
タイトル | 著者 | |
---|---|---|
![]() | くちびるに歌を | 中田 永一 |
![]() | 陸王 | 池井戸 潤 |
![]() | 悪人 | 吉田 修一 |
![]() | 誰かが私を殺した | 東野圭吾 |
![]() | 同志少女よ、敵を撃て | 逢坂冬馬 |
![]() | 爆弾 | 呉 勝浩 |
![]() | 夜は短し歩けよ乙女 | 森見 登美彦 |
![]() | レイアウトは期日までに | 碧野 圭 |
![]() | 破門 | 黒川博行 |
![]() | 決壊 | 平野啓一郎 |
![]() | ダウィンチ・コード | ダン・ブラウン |
『くちびるに歌を』中田 永一
ナレーション | 七瀬 亜深 |
再生時間 | 8 時間 18 分 |
長崎県五島列島を舞台に、中学合唱部の奮闘を描いた青春小説。
美人教師が臨時顧問に就任すると、男子生徒が合唱部に殺到。納得いかない女子部員達との間でひずみが生じ始めー。
小説の舞台も長崎県で、ナレーター七瀬 亜深氏も長崎出身。
自然な方言が小説の雰囲気にマッチしていて、まさにAudibleの利点が活かされた作品です。
文体が好きで『ずっとこの文章を読んでいたい』と思うことがありますが、七瀬氏の声も耳に心地よく、『ずっとこのナレーションを聴いていたい』気分になります。
(ASMRに近い感覚かもしれません)
自然豊かな田舎町で送る甘酸っぱい青春ストーリーも、万人の琴線に触れるものがあると思います。
ちなみに、著者の『中田永一』は人気作家『乙一』の別名義です。
『陸王』池井戸 潤
ナレーション | 高川 裕也 |
再生時間 | 16 時間 45 分 |
先が見えない足袋(タビ)製造会社『こはぜ屋』の執念の復活劇。
宮沢社長が思いついたのは足袋製造技術のランニングシューズの開発だった。数々の失敗を経て形になった新製品。スポンサーとなった選手は自身と『こはぜ屋』の運命を背負って疾走する。
ヒット作が多い池井戸作品の中で本書を推す理由は、ナレーター高川氏の声の情感と熱量。
人生の崖っぷちで勝負に挑む社長や選手の檄情が込められたナレーションは涙腺が刺激されます。
肌感ですが、この作品は『活字では泣く感じではなく、この朗読だから感涙しやすい』と感じます。
試しにAmazon/Audibleのレビューを50件ずつ確認したところ、感想に『涙 / 泣』を含んでいたのがAudbleでは9人。
対して、Amazon(本)では1人で、やはりAudibleの方が感情に訴える力が強いと言えそうです。
『悪人』吉田 修一
ナレーション | 田中 麗奈・中村 蒼 |
再生時間 | 14 時間 58 分 |
出会い系が発端になって起こる殺人と純愛の逃避行。
出会い系で会ったばかりの男女が一緒に堕ちていく。事件の真相追及と共に、切実で儚い真情を描いたラブストーリー。
ナレーターは俳優の『田中 麗奈・中村 蒼』氏。
『くちびるに歌を』同様、二人とも小説の舞台である九州出身なので方言がリアルです。
Audibleは人気俳優の朗読作品が多いのも魅力。
俳優の朗読はセリフの演技で上手さを感じることが多いんですが、田中 麗奈は地の文も印象的でした。
重厚で寂寥感を孕んだ地の文の読みは、シリアスなストーリーの中で重要な演出効果の一つになってます。
『誰かが私を殺した』東野圭吾
ナレーション | 寺島 しのぶ, 松坂 桃李, 逢田 梨香子, 高橋 克典, 新藤 みなみ, 勝 杏里, さとう あい, 稲葉 実, 四宮 豪, 柿田 よしくに, 谷口 誠太郎, 荻野 晴朗, 坂本 くんぺい |
再生時間 | 2 時間 47 分 |
亡き夫の月命日。墓前で手を合わせていると、突然背中に衝撃を受けた。気づいた時には、魂だけがこの世に留まっていた。どうやら私は誰かに撃たれたらしい。
警察の遺体安置所で出会ったのは、警視庁捜査一課の加賀恭一郎警部と部下の女性刑事・新澤。私は彼等による捜査の行方を見守りながら、なぜ自分が殺されたのかを考えた。
引用:Amazon/Audible から抜粋(太字引用者)
人気作家・東野圭吾が初のオーディオブック作品です。
Audibleの朗読は基本一人が多いんですが、本作は寺島しのぶ、高橋克典をはじめ10名以上が出演。
音響効果もふんだんに盛り込まれていて、さながら豪華なラジオドラマ。
作家/ナレーター/制作陣、全てが最高レベルで融合したオーディオブックの一つの完成形のように思えます。
『秘密・容疑者Xの献身』のような胸に迫る人間ドラマと、抑制の効いた寺島しのぶの朗読に、心揺さぶられること必至です。
再生時間3時間未満と短めな点も入門向けです。
『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬
ナレーション | 青木 瑠璃子 |
再生時間 | 15 時間 34 分 |
世界大戦下で少女狙撃兵が目にした真の敵とは?
第二次世界大戦下のモスクワ。ドイツ軍に村を壊滅させられた少女セラフィマは狙撃訓練校に入校し、自ら祖国の敵を撃つべく立ち上がる。
この作品で印象的だったのは青木瑠璃子氏の『登場人物ごとの声の演技』。
狙撃訓練生の少女達のそれぞれのキャラクターを反映した『声』の演じ分けが見事です。
事前に作品情報を知らなければ、声優が何人いるのか分からないレベルです。
声優以外にも朗読が上手いナレーターはいますが、こんな風に『人物の性格・年代・性別』による演じ分けの幅が広いのは声優ならでは。
そんな声優の凄さを初めて実感したのが本作でした。
『爆弾』呉勝浩
ナレーション | 星 祐樹, 品田 美穂 |
再生時間 | 12 時間 51 分 |
ただの愉快犯か? 確信的なテロリストか?
スズキタゴサクと名乗る男が『予言』した秋葉原での爆弾テロが的中。
次の爆発を阻止すべく、男と刑事たちの頭脳戦が始まる。
本作の注目ポイントは、スズキタゴサクという不審人物の異様なキャラクター。
そして、そのキャラを演じる星氏のナレーションもまた異彩を放ってます。
よくレビューでも形容されてる通り、声の感じをわかりやすく例えると『喪黒福造』。
ここまで際立って個性的で『変』なナレーションは他に思い浮かびません。
そのため、好みは分かれるかもしれませんが、それでも『活字を超えるナレーション』として挙げたい一作です。
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦
ナレーション | 安國 愛菜 |
再生時間 | 8 時間 |
「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。
引用:Amazon/Audible (太字引用者)
山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作!
この作品を選んだ理由はシンプルです。
『キュートでポップ』なヒロインに可愛らしい声が加わることで、より魅力的になっているため。
この組み合わせはもう鉄板で、
いわゆる『萌え』要素のある少女キャラ × 『萌え』要素のあるナレーション
はもれなく活字を超えそうとも思えます。
他にも例えば『スーパーカブ(の主人公・小熊)』も同じ理由でオススメです。
『レイアウトは期日までに』碧野 圭
ナレーション | 貫井柚佳 |
再生時間 | 7 時間 53 分 |
契約を切られた崖っぷちデザイナー × 毀誉褒貶激しい天才装丁家
引用:Amazon/Audibleから抜粋 (太字引用者)
同い年27歳、凸凹の二人が新大久保に事務所を設立
最強パートナー爆誕⁈
ストーリーの主軸となるのは二人の女性デザイナー。
ナレーションで秀逸だったのは、二人の関係性が声のトーンによって表現されているところ。
二人の微妙な距離感の変化が絶妙に声色に反映していて、それが聴く人の心を揺らします。
お互いの関係性に綻びが生じた際、わずかに他人行儀になる声に一抹の寂しさを感じたり。
これは文章では伝わらない情報なので、こういった『読書体験』もオーディオブックならではです。
『破門』黒川博行
ナレーション | 小川 輝晃 |
再生時間 | 11 時間 44 分 |
映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮は、資金回収のため、関西とマカオを奔走する。巨額の資金をめぐる争いはやがて組同士のトラブルに発展し、桑原にも絶体絶命の危機が!
引用:Amazon/Audibleから抜粋 (太字引用者)
関西のヤクザ・桑原と建設コンサルタント・二宮コンビの奮闘を描いた第151回直木賞受賞作。
本作の魅力は二人の軽妙で丁々発止なやりとり。
全然笑えない状況の中、誰を笑わす意図はなくとも、そこはさすがに関西人。ただの会話もまるで漫才です。
そんな二人の毒とユーモアに溢れたセリフを、関西出身のナレーター小川氏が生き生きと再現してます。
傍若無人なヤクザと気弱なコンサルという真逆のキャラの一人二役も喉が一つとは思えない程です。
『決壊』平野啓一郎
ナレーション | 井上 悟 |
再生時間 | 13 時間 40 分 |
『悪魔』が仕掛ける同時多発テロ×無差別殺人計画が『決壊』をもたらす。
日々の悩みや家族への違和感をブログに綴るサラリーマン、沢野良介。胸中でくすぶる憎悪をブログで吐き出す中学生、北崎友哉。無関係だった二人の人生が悪魔の手引きによって交錯する。
重々しいテーマに、やや難解な文章。内容的にはちょっと万人には勧めにくい作品です。
それでも取り上げたのは、ナレーションに圧倒されたという点で随一だったため。
特に悲痛なシーンの胸に刺さる迫真のナレーションは活字の比ではなく。
『決壊 上・下』は本で2、3回、Audibleも【上】は2回聴いてるんですが、悲劇的な展開を迎える【下】は精神的に聴き返す気になれない程でした。
そこまでくると良いことなのか一概に言えない気もしますが、とにかく『ナレーションの力』を実感させられた作品です。
『ダウィンチ・コード』ダン・ブラウン
ナレーション | 荻野 晴朗, 〆野 潤子 |
再生時間 | 上・中・下 合計17時間42分 |
キリスト教最大の秘密が今暴かれる。
ルーヴル美術館の館長がダ・ヴィンチの〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した姿で殺害された。その日、館長と会う約束をしていたハーヴァード大学教授ラングドンは警察に疑いの目を向けられるがー。
最後に唯一の海外作品。
映画でも有名な大ヒットシリーズで、純粋に続きが気になる面白さは群を抜いてます。
ナレーターは男性・女性一人ずつ。主要キャラに男女がいる場合はこの形が一番良い気がします。
ピックアップしたポイントはとにかく自然なナレーションでストーリーに没入できること。
ストーリーが演者だとしたら、ナレーションはあくまで黒子。『特に意識されることなく快適に聴ける』のも一つの理想です。
キャラの演じ分けも巧みで、よく出来た吹替映画を鑑賞してるような気分で楽しめます。
Audible 1冊目にはオススメしにくい作品・ジャンルと理由
オーディオブックは文字(漢字)や画像(挿絵・資料)がないので理解しにくい面もあります。
そういった点で以下のジャンルは少なくとも1冊目に選ばない方が無難だと思います。
SF作品 | 作品特有の言葉が登場した際、表記が不明 |
海外作品 | 名前、地名など判別しにくい |
古典作品 | 難解な単語、表現が使われていて、漢字も不明 |
ヤクザ・アングラ物 | 組織や人間関係が複雑で登場人物も多い |
画像を多く含む作品 | 別途PDF資料が添付されてる場合とAudibleでは画像自体ない場合がある |
自分は活字の場合はどれも抵抗はないんですが、オーディオブックだと慣れてからもちょっと手が伸びにくいです。
記事内でお薦めしてる『同志少女よ、敵を撃て・破門』も上記ジャンルに含まれてますが、許容範囲なレベルです。
あとがき
活字好き・読書好きほど、オーディオブックには手が伸びにくい所もあると思います。
何より自分も活字で育った人間なので、根っこのところで朗読が活字を超えることは多分ないと思います。
同時に、ここ数年で『ナレーション凄い!』と何度も実感。
オーディオブックには『活字にはない魅力』も確かにあるので、まだの人はぜひ試してもらえたらと思います。
ちなみに自分がAudibleを利用し始めた2022年頃は、無料お試し体験も1冊のみ、定額プランに入会後も月1冊1,500円でした。
そして、最初の数冊がイマイチだったため、しばらく利用期間が空くことに。
今は何冊でも聴けるので、気軽に色々試してみるのが良いかと思います。
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