『破門』(黒川 博行 著)をAudibleで聴いたので作品内容や注目ポイントを紹介します。
『破門』ショートレビュー

ヤクザから出資金を集めた映画プロデューサーがとんだー。
組の金を奪われた桑原と運悪く事態に巻き込まれた建築コンサルタントの二宮。二人は金を回収し、落とし前をつけさせるべくプロデューサーの行方を追うことに。しかし、巨額の出資金トラブルはさらなる災厄を呼び、組同士の争いに発展していくー。
関西のイケイケの武闘派ヤクザ・桑原と気弱で廃業間近の建設コンサルタントの二宮のコンビを描いた『疫病神』シリーズの5作目。
『疫病神』は二宮にとって厄介事に巻き込んでくる桑原が『疫病神』という意味です。
シリーズ5作目ですが、前作を未読でも特に問題ないです。
本作も『疫病神』の異名通り、桑原が二宮に『おいしい話』を持ってきたのが運の尽き。
映画製作にまつわる詐欺から組同士の抗争に発展し、大金と命を賭けた追跡劇に巻き込まれます。
緊迫したシーンが多いですが、お互い見下しあってる凸凹コンビ、桑原・二宮の関西人らしい軽妙なやりとりも楽しい作品です。
- 第151回 直木三十五賞受賞
- BSスカパー!でドラマ化。北村一輝と濱田岳のW主演(2015)
- 佐々木蔵之介と横山裕のW主演で映画化(2017)
タイトルの『破門』と『絶縁』の違い
『破門』は主人公のヤクザ・桑原が『組から破門される可能性』を示唆してます。
なんとなく、『破門』=『組からの追放』というイメージはあるものの、『絶縁』との違いは分かりにくいと思います。
両者の違いは作中でも触れられていて、大きな違いは『組への復帰・復縁の可能性』。
『破門』=『復縁の可能性が残されている追放』
『絶縁』=『復縁の可能性がない完全追放』
つまり、『絶縁』の方が重い処分で、抑止力としての組の看板が完全に外れるので、より命を狙われるリスクも高まります。
そういう違いを考えると、タイトルからは『桑原は破門されてしまうのかどうか?』の他に『(絶縁されずに)破門で済むかどうか?』というニュアンスも読み取れます。
『破門』作品情報

主な登場人物・人物相関図
抗争の対象が同じ川坂会直系で、同門という点がポイントになります。

詳しい登場人物まとめ
オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。
二宮啓之 | 建設コンサルタント『二宮企画』。39才。映画好き。 ペットのインコ:まき。 死んだ二宮の父親と二蝶会組長・嶋田が懇意の仲。 |
二宮孝之 | 亡くなっている二宮の父親。二蝶会の元幹部。 2代目組長・森山の兄貴分 |
渡辺悠紀 | 啓之の叔母・えいこの娘(いとこ)。ドイツにバレエ留学 |
二蝶会 | 神戸川坂会・直系。60人 |
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森山毅 | 二蝶会・2代目組長。 |
桑原保彦 | 嶋田組・組員。41歳。『性格は極めて粗暴』 小清水の映画制作に300万出資 |
嶋田 | 二蝶会・若頭。嶋田組組長。52歳。嶋田組10数人。 小清水の映画制作に3000万出資 |
とくなが せつお | 桑原の舎弟。 |
かくの たつお | 初代組長。博打好き |
きのした けん | 嶋田のガード 兼 運転手。 |
内藤 | 嶋田組御用達の医院長・内藤 |
中川 | 府警捜査4課・巡査部長。 二宮の知人。『性根は腐ってるが、仕事はできる』 |
亥誠組 | 神戸川坂会・直系。600人。 |
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モロイ | 亥誠組・組長。川坂会・若頭補佐。 |
布施 | 本部長。亥誠組・若頭。布施組(120人)・組長。 |
滝沢 | 亥誠組・副本部長。 滝沢組組長。滝沢組50人。 街金オーナー。小清水に金を貸す |
ひろせ | 滝沢組・若頭。 |
久保 | 滝沢組。角刈り。 |
磯部 | 滝沢組。半カタギ。 |
牧内 | 滝沢組。小柄。久保の兄貴分。 |
村居 | 滝沢組・元プロレスラー。 |
はつみ | 滝沢組・舎弟頭。滝沢の補佐役。『50男。3年前に出所』 |
たけなか | 滝沢組・組員 |
ひが | 滝沢組・組員。『弁当持ち(執行猶予付き有罪)』 |
【げんじ組】 | 神戸川坂会・直系。50人。 フロント「ナスプロダクション」 |
さかもと | げんじ組・組長 |
ひらやま | げんじ組・若頭 |
その他 | |
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小清水隆夫 | 映画のプロデューサー。フィルムアンドウェーブ代表 兼アクタースクール(雇われ)校長。65歳 映画『フリーズムーン(原作:フローズンムーン)』企画。 |
れみ | フィルムアンドウェーブ社員。 |
あけみ | スナック『マリ』の女性 |
みやけ よしお | 小清水がプロデュースする映画の シナリオライター |
かなもと | 小清水の芸能学校の金主。不動産屋。 |
多田真由美 | 桑原の愛人。『キャンディーズ2』オーナー。30過ぎ |
さき | エアロビのインストラクター。渡辺悠紀の先生 |
ゆき | 渡辺悠紀の友人 |
ちょう | 富山組(?)ヤクの売人 |
くまがい あきこ | 小清水の妹 |
『破門』ナレーションについて

ナレーションは『小川 輝晃』氏。
関西出身の方で、関西の方言、ノリもハマってます。
強面のヤクザ・桑原と気弱なコンサルタント・二宮の声色の使い分けも巧みで、一人でこなしてるとは思えないほどでした。
あとがき

作中何回か、桑原・二宮の二人が北朝鮮に行った話が出ます。
これはシリーズの前作『国境(2001)』で、二人で詐欺師を捕まえるために北朝鮮に行った時の話のようです。
北朝鮮が舞台の小説は読んだことないこともあり、作中、北朝鮮の話がでる度に気になりました。
そして、なんか聞き覚えのあるタイトルだと思ったら、『国境』は以前、爆笑問題の太田さんもお勧めしてた作品でした。
すぐに聴きたいところですが、記事執筆時点で『疫病神シリーズ』のAudible化は『破門』のみです。
著者 | 黒川 博行 |
ナレーター | 小川 輝晃 |
再生時間 | 11 時間 44 分 |
発行年 | 2014 |
配信日 | 2017/01/25 |
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