『らせん』(鈴木光司 著)をAudibleで聴いたので作品内容や注目ポイントを紹介します。
リアリティを増しながら深まるリングの謎と恐怖
呪いのビデオにより急死した大学教授・高山竜司。
監察医の安藤が高山の遺体を検死すると、体内から不審な数字が羅列された紙片を発見。
高山が数字の『暗号』を解読すると…
幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。
冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。
……「リング」とは? 死因を追う安藤が、ついに到達する真理。
それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。史上かつてないストーリーと圧倒的リアリティで、今世紀最高のカルトホラーとしてセンセーションを巻き起こしたベストセラー。
引用:Amazon/Audibe (太字引用者)
『らせん』ショートレビュー・注目ポイント

『リング』に続く、リングシリーズの二作目です(全6作)。
『リング』では、大学教授・高山竜司が奮闘虚しくビデオの呪いで急死。
雑誌記者・浅川は妻子の死を避けるため、『ビデオをダビングする』という”解決方法”を発見するところで終わってます。
『らせん』はまさにその直後。高山の遺体を大学時代の同級生である監察医・安藤が解剖するところから始まります。
そして、安藤は体内の異変や謎の数字の紙片を発見。
その数字から再び『リング』の謎が立ち上がり、安藤も呪いのビデオの脅威に立ち向かうことになります。
安藤と高山は大学時代、暗号解読ゲームに興じる仲で、『数字の紙片』始め、安藤が要所要所で挑む『暗号解読』も主な趣向となってます。
『リング』とはエンタメの質が結構異なるので、前作の読者に無条件でオススメできる内容ではないかもしれません。
オカルトからサイエンスに。よりリアリティを帯びながら、より現実から飛躍していくストーリー
前作は『呪いのビデオ・念写・怨霊』とオカルトチックなホラー要素が強めでした。特に映画版は。
本作は呪いのビデオから生じるウイルスに焦点を当て、医学や分子生物学の観点から謎に迫っていきます。
Audibleではウイルスの『実物画像』や塩基配列表など、生物の教科書みたいなPDF資料も添付されてます。
全体的に現実的な要素が多いんですが、オカルト以上に非現実的な様相を呈していくのが本作の最大のポイントだと思います。
怖さの質は異なりますが、怖さのレベルは前作に負けず劣らず。
そして、その根源にいるのは、やはりあの美しく悲劇的な“怨霊・山村貞子”です。
『らせん』作品情報

主な登場人物・人物相関図

詳しい登場人物まとめ
オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。
◇ …前作『リング』と同じ登場人物。
安藤 満男 | K大学医学部法医学教室講師。東京都監察医務院の監察医。34歳。 高山竜司の大学の同級生 妻子あり。一人息子:孝則。 |
高山 竜司 ◇ | 大学の哲学科の講師 大学医学部を卒業後、文学部哲学科に再入学。 32歳。『リング』の結末で死亡。症状的には心筋梗塞。 |
高野 舞 ◇ | 高山の教え子で恋人。22歳 姉:まさこ。 |
浅川和行 ◇ | M新聞社出版局の雑誌記者。32歳。(『リング』主人公) |
宮下 | K大学医学部病理学教室の助手。 将来の教授候補と目される。 安藤の学部時代の同級生で共に謎のウイルスを調査。 |
ねもと | 宮下の助手。宮下と見た目が瓜二つ。 |
うえだ | ねもとの後輩の院生の医局員。 |
せき | K大学病理学教室教授 |
くらはし かずよし | S大学法医学教室講師。『安藤と同年輩』 |
わだ | 品川再生病院 医師 |
よこた | J医大 |
なかやま | 東京都監察医務院 監察医。安藤の先輩。 |
いけだ | 同 解剖助手。 |
浅川関連・その他 | |
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吉野 賢三 ◇ | M新聞社横須賀支局 社会部の新聞記者。 |
浅川 順一郎 | 和行の兄。総合出版社の編集者 |
きむらさとし | S書房。現代思想の月刊誌の副編集長。順一郎の関係者 |
和行の父 | 次男:中学校の国語教師 |
浅川静 ◇ | 和行の妻。娘:陽子。 |
小田徹・節子 ◇ | 浅川静の両親 静の姉:よしみ(長女)、のりこ(次女)。 |
山村貞子 ◇ | 念写能力で死のビデオを作った人物。 享年30歳。劇団「飛翔」のメンバー |
山村 志津子 ◇ | 貞子の母親。特殊能力の持ち主。 |
伊熊 平八郎 ◇ | 貞子の父。T大学精神科助教授。 |
長尾 城太郎 ◇ | 南箱根療養所の医師。57歳。「日本最後の天然痘患者」。 貞子を犯し、死に至らしめる。 |
『らせん』ナレーションについて

ナレーションは『 梶山 はる香』氏一人。
前作の『丸山 雪野』氏から変わってますが、同じ女性で声の印象は近いです。
レビューにあるように『浅川』のイントネーションが前作や映画版と異なる点は引っかかるかもしれません。
ただ、『らせん』では浅川はそれ程登場しないので、それ程気になりませんでした。
本作は暗号や生物学に関する表記・画像があり、PDF資料が添付されてます。
資料を見ても理解するのは難しく、確認しなくてもストーリー自体は楽しめるかと思います。
あとがき

『リング』を聴いた際、イメージよりホラーテイストが強くない印象を受けました。
『らせん』はさらにホラーの枠に収まらない内容で、改めて『リングシリーズ』は一概にホラー小説と括れないなと思いました。
三作目『ループ』も聴きましたが、『ループ』に至っては完全にホラーではなく思弁的なSF小説という印象。
個人的にどんどんテイストが変わっていくのも楽しみになってます。
余談ですが、5章 46分頃にある映画に関する記述があります。
題名は明示されませんが、この映画はおそらくリュック・ベッソン監督の『ニキータ』(1991)。
昔見て面白かった記憶があるので補足しときます。
著者 | 鈴木光司 |
ナレーター | 梶山 はる香 |
再生時間 | 11 時間 13 分 |
発行年 | 1995 |
配信日 | 2016/06/17 |
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