『下町ロケット』紹介レビュー | 現実的ジレンマに揺れる宇宙への夢

日本の小説
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『下町ロケット』(池井戸潤 著)をAudibleで聴いたので作品内容や注目ポイントを紹介します。

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『下町ロケット』ショートレビュー

作品内容

現実的ジレンマに揺れる宇宙への夢
ロケットエンジンの研究を諦め、父の製作所を継いだ佃航平。
突然、理不尽な特許訴訟を受ける中、帝国重工が佃の特許技術に興味を示す。
特許を売却すれば経済的な窮地を脱するが、それは佃の夢に繋がる技術だった。
売却か夢か、佃の下した決断はー。

タイトルから「ロケット開発の話」という印象も受けますが、メインは特許技術に関する企業間闘争や売却を巡る駆け引き。

社内外の抜き差しならない事情と思惑が交錯する様は一般的なビジネスと変わりません。

そこに主人公・佃航平のロケットエンジン開発への想いがビジネスライクに割り切れない『夢』として、ストーリーの重要な鍵を握ります。

佃製作所の命運を分ける2つの企業との闘い

一社は同業大手のナカシマ工業から受けた特許侵害に関する巨額賠償裁判。

これは倫理的にグレーな『当たり屋的な訴え』ではあるものの、裁判の行方は佃製作所が劣勢に。倒産の可能性もある窮地に追い込まれます。

もう一社、キーとなる企業が宇宙航空関連の国内最大メーカー・帝国重工。

帝国重工はロケットエンジンに関わる技術の特許申請したところ、佃製作所に先を越されていたことが判明。

補足すると、この特許技術はナカシマ工業の件とは全く無関係です。

帝国重工は『キーデバイスは自社技術で開発する』が信条。そこで佃に特許技術の売却を持ちかけます。価格は20億。

この20億があれば佃は裁判の窮地を脱することが可能。しかし、その技術は佃の『ロケット開発』の夢にも繋がるもので、簡単には手放せず…。

自分の夢か、会社のための安全策か。佃社長はそんなギリギリの葛藤に悩まされます。

メディア化・文学賞
  • 第145回 直木三十五賞受賞
  • TBS系「日曜劇場」でテレビドラマ化。主演は阿部寛。

『下町ロケット』作品情報

主な登場人物・人物相関図

『下町ロケット』主な登場人物・人物相関図

詳しい登場人物まとめ

オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。

佃製作所・関連
佃 航平佃製作所(精密機械製造業)社長
元 ロケットエンジン『セイレーン』開発責任者
殿村直弘経理部長。元白水銀行社員
津野薫営業第一部長
唐木田篤営業第二部長
山崎光彦技術開発部長。38歳。佃と同じ大学の後輩。
『3度の飯より実験が好き。どこから見てもオタク』
江原春樹唐木田の部下。『若手のリーダー』
村木昭夫20代の中途採用社員
真野賢作技術開発部。小型エンジン開発チーム
迫田滋経理部係長。『若手のリーダー』
はなむら総務担当。ベテラン女性社員
立花洋介技術開発部。真野の部下
のむら こうすけ技術開発部主任
かわもと製造管理課。入社3年目
田辺篤佃製作所の顧問弁護士。60歳
神谷修一元ナカシマ工業の顧問弁護士。
『知財関係で国内トップクラスの凄腕』
佃和枝佃航平の母。
娘:利菜。
和泉沙耶佃航平の元妻。研究者。
ナカシマ工業関連特許侵害で佃製作所を訴える
三田公康事業企画部
おおいずみ三田の上席
にしもり事業企画部・係長。三田の部下
おおとも社長
おおまち企画部
中川京一田村・大川法律事務所。ベテラン弁護士
青山賢吾三年目の若手弁護士
帝国重工関連宇宙航空関連の国内最大のメーカー
財前道生ざいぜん みちお宇宙航空部・宇宙開発グループ・部長
富山敬治同・主任。37歳。
水原重治本部長。『にっこり笑って人を斬る』
浅木技術者。佃製作所の評価を担当
藤間秀樹社長
あんの たけひこ宇宙事業部・部長
たむら審査部の主任。佃の評価を担当
もぎ研究者。40代後半
こんだ研究者
みぞぐち生産管理部の主任。佃の評価を担当
その他
柳井哲二白水銀行・課長代理。佃製作所の融資担当
根木節生同・支店長
はまざき たつひこナショナルインベストメントのベンチャーキャピタリスト
たばた裁判官。佃製作所(原告)vsナカシマ(被告)の裁判
たかせ東京経済新聞・記者。ナカシマ工業を取材
つだ ゆうすけ企業投資や買収案件を扱うアメリカ資本の会社マトリックスパートナー・日本支社長
みかみ たかし宇宙科学開発機構の時の佃の同僚。『日本を代表する科学者』
マトリックスパートナーの技術顧問
もとき けんすけ宇宙科学開発機構 主任。 東大宇宙航空研究所教授
おおば かずよし佃の恩師。ロケットエンジン開発を手掛ける。
とくだ京浜マシナリー 調達部長。佃製作所の主要取引先

シリーズ・聴き順について

シリーズは全4作。2024年現在、全てaudibleで配信されてます。

タイトルAudible再生時間ナレーター出版年
下町ロケット11 時間 3 分平川 正三2010
下町ロケット
ガウディ計画
10 時間 19 分平川 正三2015
下町ロケット
ゴースト
7 時間 43 分谷田 歩2018
下町ロケット
ヤタガラス
 9 時間 31 分谷田 歩2018

シリーズの特徴を挙げると、次の3つ。

  • 下町の精密機械製造業・佃製作所の挑戦の記録
  • シビアなビジネスの世界で、愚直さと人情をもって対峙し続ける主人公・佃航平
  • 佃製作所の社員や帝国重工の財前などシリーズ間で共通の登場人物が多い

直木賞受賞やドラマも話題となり、『半沢直樹』に並ぶ池井戸潤の代表作と言えます。

  • 1作目『下町ロケット』が第145回 直木三十五賞受賞
  • 4作ともTBS系「日曜劇場」でテレビドラマ化。主演は阿部寛
  • 1作目はWOWOWでもドラマ化。主演は三上博史
  • その他ラジオドラマ化や、『audiobook』でもオーディオブック化

佃製作所が開発に携わる製品は作品ごとに異なります。

1作目はロケットのエンジン
2作目は人工心臓
3作目は農業用トラクター
4作目は農業用無人ロボット

聴き順は、前作の登場人物やエピソードが次作で絡んでくることもあり、順番通りがお勧めです。

流石にどれも安定して面白く、『あえて順番関係なくコレがお勧め』というのも特にありません。

時期的には1→2作目が4年後、2→3・4作目が6年後。
3・4作目に関しては上下巻といった感が強いため、順番通りじゃないと理解しづらいと思います。

1つ、注意点としては『1・2』、『3・4』でナレーターが変わる点。

続けて聴くと、3の序盤は違和感を覚えるかもしれません。

その場合、2→3の鑑賞のスパンを空けたり、最初違和感があっても聴き続けると慣れることも多いと思います。

『下町ロケット』ナレーションについて

ナレーターは『平川 正三』氏。

シリーズ2作目の『ゴースト』の他、以下の池井戸作品も担当されてます。

  • 七つの会議
  • アキラとあきら
  • ようこそ、わが家へ

熱く実直な佃社長のキャラクターに合った声質と演技で、池井戸作品らしいナレーションだなと思います。

聴く前からイメージしてた通りの声でした。

あとがき

これまで池井戸作品は何作か聴いてますが、『下町ロケット』シリーズはなんとなく後回しになってました。

『宇宙兄弟』のようにもう少し『宇宙やロケットの打ち上げ』を掘り下げる内容かと思ったら、全然そんなことはなく。

ただ、池井戸潤のビジネス小説という意味では、イメージ通りではありました。

『半沢直樹』や『陸王』などの池井戸作品が好きな人は楽しめる内容だと思います。

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著者池井戸 潤
ナレーター平川 正三
再生時間11 時間 3 分
発行年2010
配信日2018/08/26
『下町ロケット』audible基本情報

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