『カラスの親指』紹介レビュー | 詐欺師コンビが人生のドン底で仕掛ける最後の大逆転劇

日本の小説
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『カラスの親指』道尾 秀介 著(2008)。
冴えない詐欺師コンビの奮闘を描いた長編小説です。第62回日本推理作家協会賞受賞。

作品内容・あらすじ

人生のドン底で仕掛ける最後の大逆転劇

社会からはみ出して暮らす中年詐欺師コンビ。ある日、2人の共同生活に若い男女3人が加わることに。
しかし、平穏な暮らしは『過去の遺恨』によって脅かされ始める。
2人はそれまでの人生を精算すべく、一世一代の大勝負を決意する。

詐欺を生業とする主人公、武沢竹夫(通称『タケさん』)とその相棒、入川鉄巳イルカワ テツミ(通称『テツさん』)。

2人とも詐欺師ながら普通に人が良い人間です。
むしろ人が良過ぎて、それぞれ全てを失ってしまった過去を持ってます。

そんな二人がなぜかスリで生計を立てる少女らと一つ屋根の下で暮らし始めることに。
しかし、やがてある男の影がちらつき始め、平穏な日常にヒビが入ります。

男はかつてタケさんの人生を狂わせ、同時にタケさんに人生を狂わされた裏稼業の人間。性格は非情にして凶悪。そして執念深い。

社会から転落し、そのドン底でも追い詰められたタケさん達は男と組織に対し、詐欺師の本分で勝負することを決意します。

終盤に向けて怒涛のドンデン返しが展開する『コンゲーム・騙し合い』。
最後の最後、盛大に騙されるのはタケさんの宿敵のみならず、読者自身になるはず。

“全てが覆り、全てが繋がる”ラストの伏線回収、話の畳み方は本当に見事で爽快です。

2012年に阿部寛主演で映画化。
阿部寛/タケさんは少しダンディすぎかもしれませんが、村上ショージ/テツさんは原作の雰囲気に近いと思います。

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『カラスの親指』ショートレビュー・注目ポイント

重要なネタバレには触れず、注目ポイントを紹介。

  • 題材はシリアスだが、テイストはハートウォーミングなほのぼのストーリー

題材はシリアスだが、テイストはハートウォーミングなほのぼのストーリー

あらすじ的にはヒリヒリしたサスペンスですし、確かに手に汗握るような展開も楽しめます。

しかし、全体的なテイストとしてはむしろ温かく柔らかい雰囲気の作品です。

それはきっとタケさんテツさんの人柄や関係性によるもの。

そんな中年コンビの家に『見ず知らずの姉妹&姉の彼氏』が居ついて始まる、不思議な共同生活も読んでてほっこりします。

この姉妹は実はタケさんが闇金絡みで一生の十字架を背負った相手。
(それ自体は序盤で明らかになります)

しかし、タケさんも姉妹も最初はお互いの『関係性』に気付いておらず、『成り行き』で一緒に住むことになったのは深い因果を思わせます。

一連の詐欺師vs闇金組織の攻防の中で、タケさんと姉妹、それぞれの悲劇と救いが密接に絡み合ってきます。

『カラスの親指』作品情報

主な登場人物・人物相関図

『カラスの親指』主な登場人物・人物相関図

詳しい登場人物まとめ

オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。

名前のある主要な登場人物は少なめです。

武沢竹夫タケザワ タケオ詐欺師。46歳。妻ユキエ娘サヨ。
入川鉄巳イルカワテツミタケさんの相棒。45歳。英語が得意。
河合まひろスリで生計を立てる。18歳。
河合やひろまひろの姉。無職。
石屋貫太郎やひろの彼氏。
ヒグチ裏金融の人間。
ノガミヒグチの部下。
『セイリヤ』ヒグチの部下。
『老ソラマメ』ヒグチの部下。

シリーズ・聴き順

タイトルAudible再生時間ナレーター出版年
カラスの親指13 時間 6 分多田 啓太2008
カエルの小指11 時間 44 分多田 啓太2019

どちらも一番のテーマ・見所は裏稼業の人間同士の『騙し合い』

『武沢たちが戦う敵とその理由』に繋がりはないので、どちらから読んでも問題はありません。

ただ、主だった登場人物は同じですし、大きな流れ(武沢が詐欺師から引退→その後の生活)も大事な要素なので、順番通りに聴いた方が楽しめると思います。

また、『カラスの親指』の方は阿部寛主演で映画化もしてます。

Audible利用上の補足

通常、同一シリーズのAudible作品はシリーズをまとめた一覧ページがありますが、『カラスの親指/カエルの小指』はありません。

そのため、各作品ページにシリーズ一覧ページへのリンクもありません。

理由は不明ですが、両作品が『仕様としてシリーズ一覧ページが設けられる前の配信だから』かもしれません。

通常は『各作品ページにシリーズ一覧ページへのリンクがない』と『=シリーズの別作品は配信してない』となるんですが、本シリーズはそういう訳ではないので、一応補足しておきます。

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『カラスの親指』タイトルの意味・由来について

『カラス』は、本作の中で『詐欺師』を指します。
『シロサギ(素人を騙す詐欺師)』のように一般的な隠語という訳ではありません。

『親指』の意味は重要なネタバレを含みます。

タケさんとテツさんは一緒に暮らす5人(タケ・テツ・まひろ・やひろ・貫太郎)のことを『お父さん指・お母さん指』など指に例えた話をします。

その際、テツさんは自分のことをお父さん指と言います。

物語の終盤、ヒグチに対する詐欺を含めて全てがテツさんの計画だと判明。

テツさんはタケさんに『以前自分のことを親指といった理由』について次のように言います。

”あれには2つの意味があったんですよ。

一つはもちろん自分は父親だって意味。〜略〜

親指だけが正面から他の指を見ることができるんです。

全部の指の中で親指だけが他の指たちの顔を知ってるんですよ。

『カラスの親指 CROW3』 /太字引用者

やひろとまひろはタケさんテツさんの実像を知らない。タケさんもテツさんの正体を知らない。

しかし、テツさんだけが全員の過去や関係性、本当の顔を知っている。

最終章の『CROW3』で『親指』にはそんな意味を込められていることが分かります。

『カラスの親指』ナレーションについて

ナレーションは『多田 啓太』氏一人。

頼れる感じのタケさんと人懐っこい感じのテツさんなど、人柄や関係性がよく伝わる朗読だと思います。

やひろの姉の彼氏、貫太郎が軽く歌を歌うシーンがあって、実際ナレーターの歌で聞けるのはaudibleならではです。

作品内で『おかま』という表記があり、それにまつわる表現も時勢的にそぐわないと思われます。

出版が2008年なので、当時は特に問題なかったのかと思います。

あとがき

この作品は『詐欺』がテーマなのに、主人公の詐欺師が良い人なのが大きな特徴です。

途中、『なんでこんな人が詐欺してるんだろう』と違和感を覚えるくらいでした。

その根っこは歪んでない人柄が作品のテイストと方向性を決め、ラストを清々しいものにしてるんだと思います。

また、『ラストのドンデン返し』は『コンゲーム』物の定番ですが、それを差し引いても目をみはるものがあります。

ある種の勝負的なドンデン返しに加えて、人生そのものもひっくり返るようなダイナミズムがこの作品を一回り大きいものにしてます。

日本推理作家協会賞受賞、直木賞候補作ノミネートも納得。直木賞受賞でも遜色ない作品だと思います。

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著者道尾 秀介
ナレーター多田 啓太
再生時間13 時間 6 分
発行年2017
配信日2020/03/13
『カラスの親指』audible基本情報
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