『爆弾』紹介レビュー | 爆弾テロを巡る異様な不審者と異能の刑事の密室心理劇

日本の小説
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『爆弾』呉勝浩 著(2022)。
爆弾テロ犯と警察の攻防を描いた犯罪ミステリー小説です。

作品内容・あらすじ

ただの愉快犯か? 確信的なテロリストか? 

スズキタゴサクと名乗る男が軽犯罪で捕まった。
男が『霊感』で秋葉原で爆発が起こると告げると、直後に『予言』は的中。
次の爆発を阻止すべく、男と刑事たちの頭脳戦が始まる。

ストーリーの一番のテーマは『次の爆発を警察は阻止できるか?』

スズキはあくまで『霊感』で爆発を予言した体を通します。

とぼけた振りをしたまま、次に爆発が起こる場所を暗に匂わせ、刑事が『ヒントの解明』に挑む。
そんな奇妙な形で頭脳戦/心理戦が繰り広げられます。

もう一つのポイントは、スズキタゴサクの犯行の目的

スズキは一見、ただのうだつの上がらないおじさん(49歳)です。

ずっと人に見下されてきて、口にする言葉もネガティブの塊。
でも、同時にゴリゴリした強いエゴも感じさせます。煮詰めすぎて異臭を放つような。

そんな男がなぜ爆弾テロを起こしたのか?

ただの逆恨みにも思えるし、深遠な動機を秘めてるようにも思えます。

このスズキのなんとも言えない奇怪なキャラクターが、本作の魅力であり核となってます。

特にAudibleではスズキの声とキャラクターがかなり独特。

ナレーション込みで異色の作品となってます。

文学賞受賞歴
  • このミステリーがすごい!2023年版 国内編第1位
  • ミステリが読みたい!2023年版 国内編第1位
著:呉勝浩
無料期間延長中。〜10/14まで! 
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『爆弾』ショートレビュー・注目ポイント

  • 『密室劇』特有の緊迫感に満ちた心理戦
  • 異様な不審者と異能の刑事たちの直接対決
  • スズキタゴサクが抱く欲望の果てのカタルシス

『密室劇』特有の緊迫感に満ちた心理戦

『爆破事件を扱った警察物』というと次々とシーンが展開する印象もあります。

しかし、この作品の主な舞台は警察署の狭い取調室。

事件の鍵を握る人物は、『スズキタゴサク』と取り調べをする数人の刑事。

つまり、閉ざされた空間・限られた登場人物で構成された、いわゆる『密室劇』に近い形となってます。

密室劇というと古典的代表作は『12人の怒れる男たち』。
最近だとそれにインスパイアされたと思われる話題作『六人の嘘つきな大学生』。

こういう密室での会話主体の展開、ヒリヒリした心理戦は個人的に好みなんですが、本作もそんな密室劇の醍醐味が詰まってます。

異様な不審者と異能の刑事たちの直接対決

特筆すべき点は犯人側と刑事側、どちらの人物も一癖も二癖もあるところ。

スズキは分かりやすく異様でどこか怪物じみています。

加えて、スズキと対決する主に二人の刑事、清宮類家も濃いキャラをしてます。

特にAudibleだとキャラ濃度がだいぶ割増になっており、わかりやすく言うとスズキのキャラ/声は喪黒福造、清宮刑事はフリーザ。

喪黒福造 vs フリーザ。
これだけでやり取りの異様さが伝わるかと思います…。

後半登板する類家刑事のキャラはそのフリーザ(清宮刑事)よりさらにパワーアップ。

濃すぎるスズキのキャラを喰う勢いで攻め続けます。

クセが強めのナレーションはきっと好みが分かれるところですが、この振り切ったナレーションが本作をより異彩を放つ怪作/快作たらしめています。

スズキタゴサクが抱く欲望の果てのカタルシス

ストーリー的にまず事件の行方に目がいきますが、『犯行の目的』も重要なテーマになっています。

スズキは比較的序盤から『欲望』についてはっきり口にします。

特に注目しなければ聞き流してしまいそうですが、スズキの欲望と一連の事件がどう絡むかも注目ポイントです。
 
スズキタゴサクは何を強く求めているのか?

およそ半世紀の人生で何も手に入れられず、誰からも求められず。

そんなスズキが、だからこそ求めるに至った欲望とは?

そしてその欲望は爆弾テロによって浄化し、成仏するのか。

その深淵には決して『彼岸の変人』では片付けられない人間の暗部が横たわってるように思えます。

『爆弾』作品情報

簡単なあらすじ

東京、炎上。正義は、守れるのか。

些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」。
警察は爆発を止めることができるのか。
爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。

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主な登場人物・人物相関図

『爆弾』主な登場人物・人物相関図

詳しい登場人物まとめ

オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。

容疑者・警察関連
スズキ タゴサク「霊感」で爆弾の爆発を「予言」する不審者。49歳。
等々力 功トドロキ イサオ野方警察署刑事。40歳。
伊勢 勇気同署刑事。調書記録を担当。
鶴久 忠尚同署刑事課長。通称『75点の男』。
イヅツ同署刑事。等々力の後輩。
長谷部 有孔ハセベ ユウコウ同署の元刑事。通称『ハセコウ』『刑事課の裏のドン』。
清宮 輝次警視庁捜査一課特殊班捜査係。
類家清宮の部下。小柄+丸メガネ+天然パーマ。
倖田 沙良コウダ サラ野方署沼袋署交番勤務。巡査。
矢吹 泰斗ヤブキ タイト同上。サラの相棒。伊勢の同期。
猿橋杉並署刑事。沙良と組んで捜査。通称『ラガーさん』
その他
ミノリタゴサクが学生時代に恋してたと話す少女。
石川明日香長谷部有孔の元妻
石川美海長谷部有孔の長女
石川辰馬長谷部有孔の長男
山脇池尻のシェアハウスの住人。180cm100kg超え。
池尻のシェアハウスの住人。日本とオランダ人のハーフ。
旅行会社勤務の男性池尻のシェアハウスの元住人。
細野ゆかり女子大学生。
蓮見先輩細野ゆかりの大学の先輩。

『爆弾』ナレーションについて

ナレーターは星 祐樹氏、品田 美穂氏の二人。

スズキタゴサクはじめ独特なナレーションは星 祐樹氏。
星氏の別作品を聴いてみたら、当たり前ですがごく普通のナレーションでした。

類家刑事の声はややナルシスティックで男前っぽいイメージ。
でも、プロフィール的には「天然パーマ・メガネ・小柄」なので、もしそのまま映像にしたら声と姿のギャップが凄そうです。

女性の主要人物『倖田 沙良』が軸になるパートを担当してるのが品田氏。

こちらはアクの強いキャラが多いわけではないので、ナレーションもごく標準的な感じです。

▼ 漢字について気づいた事memo
誤りではないですが、同じ漢字を両氏で別の読み方をしてる単語がありました。

読み方
稀代きだい。きたい。

人によってはどちらかが間違い?と引っかかるかもしれません。

自分は以前『きだい』だけが正解かと思ってたんですが、両方正しい読み方です。

あとがき

この作品はとにかくまず個性的なナレーションが印象的でした。

合わない人がいるのも分かりますし、自分も基本的に朗読の存在感は控えめな方がいいと思ってます。

ただ、それでも本作の『怪演』はスズキという異質な人物の要請する所であったと思うし、すごくハマってたと感じます。

これだけの話題作で、これだけ思い切った作りをされたこと自体もスゴイと思います。

なんとなくですが、スズキみたいに完全に『逸脱』したキャラがどんどんボルテージを上げてく様をみて、著者は書いてて楽しかったんじゃないかと想像しました。

決して簡単でも楽でもないけど、でも楽しそうだなと。

同じことをナレーターの方にも感じて、オーディオブックを聴いてて初めてナレーションの裏話や役作りの感想を聞いてみたいと思いました。

著:呉勝浩
無料期間延長中。〜10/14まで! 
著者呉 勝浩
ナレーター星 祐樹, 品田 美穂
再生時間12 時間 51 分
発行年2022
配信日2022/10/07
『爆弾』audible基本情報

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