『60 誤判対策室』紹介レビュー | 異色のチームが挑む、死を望む死刑囚の『誤判』証明

日本の小説
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石川智健『60 誤判対策室』(2015)。
ジャンルは事件の真相に迫る犯罪小説/サスペンスです。

内容要約

死刑判決を再調査するために国が設立した機関『誤判対策室』。
配属された刑事・検事・弁護士という異色のチームで親子3人を殺害し死刑判決を受けた事件を再調査する。

念の為、補足すると『誤判対策室』はもちろん架空の組織です。

興味深いのは、本作で再調査する犯人は最初から罪を認めているということ。
もっと言うと罪悪感から積極的に死刑を望んでさえいます。

『自分は死刑で当然。事件の再調査なんて不要』と断言する犯人。

そんな明らかに真っ黒な判決に冤罪の余地はあるのか?
あるとしたら、なぜ犯人は死刑を望んでいるのか?

『誤判対策室』という新鮮な切り口から事件の全貌に迫りつつ、王道の犯罪ミステリーの醍醐味が詰まった一作です。

2018年に舘ひろし主演でドラマ化もされています。

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『60 誤判対策室』ショートレビュー・注目ポイント

  • それぞれワケありのメンバーが挑む、冤罪死刑囚の『誤判』証明
  • 対策室と敵対する警察・検察の容赦ない口撃がストーリーを盛り上げる
  • 誤判対策室の真の存在理由とは?

それぞれワケありのメンバーが挑む、冤罪死刑囚の『誤判』証明

誤判対策室のメンバーはたったの3人。
それも『刑事・検事・弁護士』という異色の顔ぶれでチームを組んでます。

有馬英治は自らの取調べで冤罪を生み出してしまった過去を悔やみ続ける刑事。
春名美鈴は3度も連続で無罪判決を受けた落ちこぼれ検事(日本の裁判の有罪率はほぼ100%)。
世良章一は有能な若手ながら身内にある『陰』を抱えた弁護士。

そういったそれぞれの背景もストーリーの流れに重要な影響を及ぼします。

また、単純にこの3人の砕けたキャラとフランクにぶつかり合う関係性が良いです。

定年間近の有馬が自分の娘ほどの春名にガンガン小言を言われ、その間に入り潤滑油となる世良。

そういう空気感が、作品の雰囲気を良い意味で軽く、読みやすくしています。

対策室と敵対する警察・検察の容赦ない口撃がストーリーを盛り上げる

誤判対策室は判決を覆すため再調査を行います。
そうなると当然、対策室は『四面楚歌』です。

死刑判決は警察と検察が全力を尽くして手に入れた戦果。
対策室はわざわざそれを覆そうとするので、両組織にとって厄介な邪魔者でしかありません。

しかも相手は圧倒的な権力組織。
再調査の最中、対策室メンバーは各所で冷遇され、『この死刑囚が冤罪のはずないだろ』とバカにされます。

『敵側』の人物はとにかく居丈高で嫌味な言動が多い。
でも、その『煽り』が物語の欠かせないアクセントになってます。

『これほど逆風が吹く中で有罪が覆るのか?』
『でも、勝ち誇った警察や検察に一泡吹かせしてほしい』
と読み進めるほどにテンションと期待感が高まります。

誤判対策室の真の存在理由とは?

対策室のメンバーは冤罪の死刑囚を救うために奮闘します。
読者ももちろんそういう存在だと思ってます。

しかし、ある人物から対策室の真の創設理由が明かされます。

対策室の役割と存在意義は『死刑囚を救うため』だったはずがー。

死刑制度は常に議論の的となり、賛否分かれるシステムです。

その問題に対して『誤判対策室』という一つの回答を提示してる所が興味深いです。

『60 誤判対策室』ナレーションについて

ナレーターは『後藤 敦』氏一人。

全体的にとても良かったです。
贅沢を言えば、主要メンバーに女性がいるので、男女一人ずつだとより良かったかと思います。

後藤氏は65歳ということですが、若いキャラは若々しく、渋いキャラは年相応に渋く。
確認しなければ実年齢が全く分からない所にプロの力を感じます。

テーマの割に作品の雰囲気が重すぎないのは、地の文でも親しみやすいナレーションのトーンにもよると思います。

『60 誤判対策室』作品情報

簡単なあらすじ

死刑判決を受けた事件を再調査するために、国が新たに設立した機関『誤判対策室』。

そこに有馬刑事、春名検事、世良弁護士の3人が配属された。

ある時、有馬の元にある情報が入る。すでに古内博文に死刑判決が下った殺人事件には別に真犯人がいるという。

事件を調べるごとに冤罪の確信を強める有馬。

しかし、当の古内死刑囚に話を聞くと、頑なに自分が犯人だと主張。有馬らの再調査を拒否する。

事件の背景にはどんな事情があり、古内の冤罪を晴らす手立ては見つかるのか?

対策室が必死に調査を続ける中、古内の死刑執行のカウントダウンが始まろうとしていたー。

タイトルの『60』は要所要所で60という数字がキーワードになっていることに由来します。

各章のタイトルも『六十年/六十の壁/刑法六〇条』という形になってます。

この数字は重要なポイントではあるんですが、特に意識しなくても問題ないといえばないです。

『60 誤判対策室』詳しい登場人物まとめ

オーディオブックだと頭に入ってこない事があるため、なるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてください。
※オーディオブックでの視聴のため、正確な表記が不明/誤りがある場合があります。漢字はwikipediaや本を参照。

誤判対策室・警察 関連
有馬英治警視庁捜査一課から誤判対策室に出向。60歳。取り調べの名手。
世良章一誤判対策室 弁護士。30歳。
春名美鈴誤判対策室 女性検察官。32歳。
西島慎太郎検察官。古内死刑囚を担当。
サカグチ カツユキ府中東警察署 警部補。古内事件で取調べ担当。
コイトサカグチ警部補の部下。
オオタ ケンイチ医科大学教授。古市裁判で死因を検証。
アガワ弁護士。古内裁判で弁護を担当。
税所昭サイショ アキラ千葉中央大学の解剖医。古市事件を再検証。
山岡周二東名新聞社の記者。
中倉綾子小料理屋『夕月』の女将。夫 透。
世良コウゾウ世良章一の父。衆議院議員。
トリカイ世良議員の秘書。
古市博文・事件 関連
古内博文母子3人の殺害事件で死刑判決を受ける。56歳。
ハセガワ ユミ事件の被害者。娘 アイナ、ユリア。
矢野琴乃古内の娘。
矢野高虎矢野琴乃の夫。
オオクボ ヒデキハンコの訪問販売詐欺罪で捕まる。
フナイ ハジメ古市の警備会社の同僚。裁判で証言。
梶永養心寺の住職。死刑囚と話す教誨師。

あとがき

続編の『20 誤判対策室』の方もaudibleで視聴。記事を書いてます。

どちらから入っても問題はないですが、特に『20』から入る理由もないので、まずは『60』をお勧めします。

面白さは個人的に本当にちょうど同じくらいでした。

ラストの『どんでん返し』の意外さとインパクトは『20』が上という人が多い気はします。

無料期間延長中。〜10/14まで! 
著者石川 智健
ナレーター後藤 敦
再生時間10 時間 49 分
発行年2015
配信日2019/11/08
『60 誤判対策室』audible基本情報

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