黒沢咲『渚のリーチ!』(2022)
現役のプロ雀士 黒沢 咲氏によるデビュー作となる自伝的な麻雀小説です。
『秒速で恋に落ちた。』
女子大生、渚が恋に落ちたのは麻雀だった。
一念発起してプロ試験に合格した渚は新たに麻雀リーグが設立されることを知り、更なる高みへ挑戦することを決意する。
自分は著者情報を含め麻雀の予備知識はゼロでした。
視聴したキッカケはなんとなく麻雀のプロリーグに興味が湧いたため。
そんな初心者未満が読んだ一番の印象は『スポーツ物の青春小説みたい』。
昨今の麻雀イメージの健全化を後押しするような作品で、『あとがき』によると、やはりその点はかなり意識したということです。
試合シーンに関しては、正直素人にはちょっと難しかったです。
特にaudibleだと専門用語の漢字が分からないのがネック。
(PDFで牌の図解もあったんですが、毎回確認するのは手間で確認してないこともあり)
同じ内容でも漫画や映画なら理解できた気がします。
ボリュームやストーリー自体は比較的ライトでかなり読みやすいエンタメ小説に仕上がっています。
特に麻雀や著者のファンの方なら有無を言わさず興味深い一冊だと思います。
『渚のリーチ!』ショートレビュー・注目ポイント

- 事実がふんだんに盛り込まれた自伝的小説
- 込み入った麻雀の攻防戦を楽しむというより、軸となるのは主人公のライフストーリー
事実がふんだんに盛り込まれた自伝的小説
本作は『自身のプロ経験をリアルに反映させて描いた』自伝的な小説ということです。
黒沢咲:北海道札幌市生まれ、東京都育ち。上智大学理工学部化学科卒業。日本プロ麻雀連盟のプロ雀士。自団体のリーグ戦ではA1リーグ所属(2022年2月現在)。通り名は”強気のヴィーナス”。第6・7期プロクイーンほか複数のタイトルを獲得している。2018年からABEMAでスタートしたMリーグでは、TEAM RAIDEN/雷電から指名を受けて初代Mリーガーとして活躍。門前高打点の華麗な打ち筋で、”お嬢”のあだ名で親しまれ多くのファンを魅了している。本書が初の著書。
amazon 『渚のリーチ!』
作中の『渚』の通称は『強気のヴィーナス』。
これは著者本人と同じで、他にも工学部出身など細かいところもリンクしてます。
また、『鳴く』という手法にまつわる心理描写が多く、この点はかなり本人とリンクしてそうだと素人ながら感じました。
著者のインタビューによると、6〜7割実話で、登場人物も実在のモデルがいるそうです。
さらに、あとがきによると作中の試合展開は全て過去の試合を元にしているとのこと。
著者のファンが読んだら、より興味深く楽しめる内容になってます。
メインとなるのは麻雀の試合シーンより、主人公のライフストーリー
当然、麻雀の試合シーンはあるんですが、そこまで物語の中心という感じではないのは意外でした。
どちらかというとメインは、普通の会社員だった渚が『好き』だけを武器にプロの世界に飛び込み、色々な壁にぶち当たりつつ突き進んでいく、という人生の物語です。
プロと会社員の両立のジレンマ。
自分の戦い方、存在意義についての葛藤。
新しく設立された麻雀リーグへの挑戦
好きなことを突き詰めることで味わう苦しみ。
そしてその苦しみを超えた先で見えてくるもの。
作中、麻雀を通して自分と人生を見つめる渚の成長が描かれていて、そんな渚の姿は麻雀というテーマを超えて多くの読者の人生とも重なるはずです。
『渚のリーチ!』作品情報

主な登場人物・人物相関図

詳しい登場人物まとめ
オーディオブックだと頭に入ってこない事があるためなるべく全人物メモしてます。同様の方がいたら参考にしてもらえたらと思います。
※抜けている人物がいる可能性があります。
※オーディオブックでの視聴のため、未確認の表記はカタカタ。漢字は公式かwikipedia参照。
| 岡崎渚 | ITコンサルタントからプロ雀士に転身。 プロの名前は大地渚。 |
| 祖父 | 渚の名付け親。 |
| 松岡菜月 | 渚の会社の先輩社員。 |
| 一ノ瀬 | 雀荘『一ノ瀬クラブ』オーナー。 |
| たまちゃん | 一ノ瀬クラブの常連客。 |
| ユウキさん | 一ノ瀬クラブの常連客。 |
| ヨシオカ マコト | サイバーオフィス社長。 Mリーグを主催。 |
| プロ雀士 | |
|---|---|
| 桜庭優成 | トップ雀士。『さそりの桜庭』 数々のタイトルを総なめ。 |
| ヤマデラ マナミ | プロ雀士。 |
| オダハラ | プロ2年目。 |
| エノキド ユウ | 『死神のユウ』。 |
| 一ノ瀬 リンカ | 史上最年少でプロに。『パーフェクト・クイーン』 芸能活動も行う。一ノ瀬クラブオーナーの娘。 |
| サワグチ ナナ | 渚の同期。元レースクイーン。 |
| シノハラ | 渚の先輩。 |
| サエジマ ミツキ | 『芸能界最強』の雀士。歌手。 チーム雷神。 |
| キムラ シュン | デジタル派。 |
| ムラタ コウジ | ベテラン。 |
| ヒビ カナエ | 若手。 |
| マツイ タダナオ | 『人気最強雀士』。 |
| カモシダ マナブ | チーム雷神。日本プロ麻雀連盟理事。 |
| クスノキ サトル | 『魔神』 |
| タニガワ | 日本プロ麻雀連盟会長。 |
『渚のリーチ!』ナレーションについて

ナレーションは『宿輪(しゅくわ)優花』氏一人。
女性らしさの中に強い意志を感じる声で、『強気のヴィーナス』のキャラや作品内容と合っていると思います。
上でも触れたように麻雀未経験の場合、脳内変換できない漢字が度々出てきます。
あとがき

今回、著者に関しても予備知識ゼロで視聴。
作品を聴き進めると、一つ心の中でざわざわと感じたことがありました。
それで途中で作品情報を確認し、著者がプロ雀士で小説デビュー作品と知って、さらに嫌な予感が…、
と、なったのですが、結論としては思い過ごしでした。
『嫌な予感』というのは『この小説は本当に著者が一人で書いた作品か?』、つまり『ゴーストライターでは?』と感じた、ということ。
理由を一言でいうと『文章を読んだ印象』ですが、書籍版では最初にちゃんと『執筆協力 橘もも』とクレジット表記がありました(kindleのお試しで確認)。
また、最後の『あとがき』でも橘氏と協力して作り上げた経緯が紹介されてます。
これは有名な話なので例に出すと、以前、ホリエモンの小説『拝金(2010)』を読んだ際も同様の印象を受けたんですが、『拝金』はあくまで本人一人で執筆したという体裁でした。しかし、数年後、実はゴーストライターだったと発覚。ちょっとした騒動になりました。
本作もそういうパターン?と思ったのですが、ただ、変に隠さなければいいだけの話なので、ちゃんとクレジットがあってホッとした次第です。
以前(?)は『ゴーストライター』は公然の秘密的な存在だったようですが、その部分でも麻雀と同じく業界の健全化を感じました。
| 著者 | 黒沢 咲 |
| ナレーター | 宿輪 優花 |
| 再生時間 | 5時間19分 |
| 発行年 | 2022 |
| 配信日 | 2022/11/11 |
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